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  • 執筆者の写真ジュエリー法務相談室

御木本パリ裁判(1924年)についての調査

更新日:2019年8月2日



御木本が欧州に養殖真珠を輸出しはじめた頃,欧州の宝石商たちから「養殖真珠はニセモノだ」として排斥運動を起こされ,パリで裁判に発展した有名な「パリ裁判」。ここで勝訴して御木本の欧州進出は加速したと言われます。


日本のジュエリー史を語る上でも,また今後の真珠大国ニッポンを目指す上での法務戦略としても,調査研究に値するテーマではないでしょうか。



Q1 このパリ裁判の請求原因は何だったのでしょうか?

Q2 御木本はどのようにしてパリでの訴訟を戦ったのでしょうか?訴訟代理人は?専門家証人は?

Q3 判決の理由・事実認定は?



調査を行い随時更新していきたいと思っています。


【Q1について】 このパリ裁判の請求原因は何だったのでしょうか?

民事裁判であることがミキモトのサイトからわかりました。 ただ,ロンドンの新聞にニセモノだという記事が掲載されたことを発端にしているとすると名誉毀損による差し止めか損害賠償なのか?それとも別の請求原因だったのかが気になります。


○ミキモト公式サイト 『「日本の真珠商人が扱っている養殖真珠は、天然真珠の模造品であり、それを売るのは詐欺商法だ」と伝える記事が、1921年、ロンドンの新聞に掲載されました。日増しに騒動は広まり、パリでも養殖真珠に対して疑いの目が向けられることに。フランスでの3年にも及ぶ民事裁判の結果、MIKIMOTOは勝訴を勝ち取りました。学者たちが、養殖真珠と天然真珠は科学的に違いがないと発表することで、ミキモトパールに対する偏見を正したのです。この「パリ裁判」をきっかけに、養殖真珠とMIKIMOTOは世界に広く認められました。』 (ミキモトwebサイト https://www.mikimoto.com/jp/history/index.html より)


他のサイト (田口セイコー堂 http://www.taguchi-seikodo.jp/pearl/ 等) では,御木本側から「訴え」たと書いてある記事がありましたが,法的な「訴訟提起」という意味か定かでないため保留にしておきます。

少し詳しいサイトを見つけました。 いわゆる「パリ裁判」の前に,模造真珠を「ミキモト真珠」として販売した者を告発したという訴訟(刑事訴訟か)があったようです。 パリ裁判についても,パリの宝石商組合が輸入拒否権を濫用して輸入を阻止しようとしたのを,組合側の「不当輸入阻止」を理由に民事訴訟を提起したように読めます。 ただ,出典等がいまいち明らかでなかったので更に調査を進めます。

http://www.nihongo.com/aaa/pearl/p2youshoku/p23chii.htm 『パリ かかる間にあって、養殖真円真珠の価値を逆用し、かつ世上一部にそれを偽物とする宣伝のなお潜行しているのに乗じ、真珠としては全然偽物たるいわゆる模造真珠をば御木本パールといって販売する者が現れたので、御木本真珠店ではその一人を裁判所に告発し、その結果今後かかる詐欺行為をなす者は厳罰に処せらるべき旨の判決を得た。

元来フランスにはダイヤモンド、真珠その他の宝玉を取り扱う組合があり巨額の資金を擁して業界に君臨していたが、この組合の連中は御木本パールの出現に種々の迫害運動を試みるに至った。 その第一は養殖真珠を模造真珠として宣伝した。 当時フランスは第一次大戦の痛手がなお深刻で 奢侈品の輸入を厳禁していたため、真珠の如きものは再輸出することを条件にしなければ輸入できず、その輸入拒否の権能をこの組合が政府から委託されていた。 そして彼等は養殖真珠が輸入されても世人がこれを顧りみぬことを欲し偽物呼ばわりをしたため、御木本側は抗議を発しフランス税関も天然真珠と同様のものであるとの断定を下した。 そこで第二の方法は彼等は前記の輸入拒否権を濫用して養殖真珠の輸入を阻止せんとしたが、御木本より仏国国務省にその不当を訴え、その結果は輸入拒否権が彼等の手から税関にもどされることになった。 一方御木本真珠店のパリー代表者ポール氏はかの組合側の不当輸入阻止を民事裁判に訴え、再三審理の結果、天然真珠と全然同一の取扱いをうけるようになったのである。

他方学者の中からもボルドウ大学のプータン博士の如き学者が、きわめて公正な見解のもとに真円真珠が天然産のものと同一なることを確認し、その所説を学会論とし、また著書において広く世に紹介公表した。 すなわち、英国におけると同様仏国においてもまた学問上からは養殖真珠は天然真珠と同様の資格を与えられ、ここにおいて、養殖真珠の名声は普く世界の隅々にまで知れわたったのであった。』(下線を加筆)



【Q2について】 御木本はどのようにしてパリでの訴訟を戦ったのでしょうか?訴訟代理人は?専門家証人は?


○wiki 信憑性は劣るものの,wikipediaに,証人となった学者2名の名前がありました。 『1921年(大正10年)、ヨーロッパの宝石商が天然真珠と見分けのつかない養殖真珠をニセモノ、つまり詐欺であると断定した騒ぎから訴訟に発展し、御木本側ではイギリスではオックスフォード大学のリスター・ジェームソン、フランスではボルドー大学のH・L・ブータンなどの権威者を証人として正論を述べる等して対抗。イギリスの宝石商は訴訟を取り下げたが、フランスは粘り強く拒否を続けた。1924年(大正13年)5月24日、パリで起こした真珠裁判にて天然と養殖には全く違いが無かったという判決を受け全面勝訴した。1927年(昭和2年)、フランスの裁判所から天然と変わらぬものとの鑑定結果の通知を受け、ようやく世界に認められる宝石となった。』 (wikipedia御木本幸吉 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%BE%A1%E6%9C%A8%E6%9C%AC%E5%B9%B8%E5%90%89 )



○栄光真珠株式会社 弁理士の内村先生という名前が出てきました。 http://www.eikopearl.com/pearlbusiness/pearl_business1-5.php 『1924年フランスのパリで開かれた裁判で、日本最高の弁理士であった内村先生や動物学の権威宮島幹之助先生、またオックスフォード大学の動物学の教授リスター・ジェームソン博士、ボルドー大学の教授ブータン博士などの権威者が、御木本側に立った議論を展開しました。彼等の論を要約すると『養殖真珠は天然と外観は区別し難く、種玉(核のこと)が人工か否かの違いと、種玉に真珠層を巻かせる始動を人工的におこなうか否かにあり、真珠層そのものは養殖真珠も天然真珠も異ならない。しかるに真珠の真珠たる所以は真珠層にある以上「養殖真珠」は「天然真珠」と本質的に変わらない』(乙竹あい「父、御木本幸吉を語る」)というもので、天然貝と養殖貝の真珠には、全く違いが見られないことを明らかにし、全面勝訴しました。』



【Q3について】

判決の理由・事実認定は?


【関連記事】

御木本パリ裁判の判決文の解説は以下の記事をご覧ください。




[画像出典:MIKIMOTO https://www.mikimoto.com/jp/history/index.html?fbclid=IwAR26GesLkxmqlyFXk5BoVBkCSjWHzChRh36SG5OE1H2zxh1F1eyywXMerhA]




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